寝相のお話


 きれいな満月が夜空に浮かんでいる。 夜景を一望できる広大な草原に、エレナという少女と、エトヴィーンという少年が満月を眺め、たたずんでいる。
「きれいですね」
 まるで月に魅了されているかのようにエトヴィーンは言った。
「そーだね」
 同じくエレナも月に魅了されているかのように言った。 傍から見ると、二人はドラッグをやって朦朧としているように見えるだろう。
「ねえ、何で方位磁針がひっきりなしにぐるぐる回ってるの?」
 エレナは顔を下げ、握りこぶしを開いた。 すると、手のひらにはまるで魔法のように、何の脈略も無く方位磁針が現れた。 方位磁針は懐中時計のような形をしているが秒針や時針は無い。 なぜか磁針はくるくると、尋常ではない速さで回っている。 エレナは磁針を睨んだ。 すると、蛇に睨まれた蛙のように一瞬でぴたりと磁針は止まった。
「不思議ですね」
 突然、草原に突風が吹き荒れる。 辺りに生えた草はざわめいた。
「まるで夢だね」
 エトヴィーンは自分の腕を摘み、「痛いので夢じゃないと思いますよ」と、鼻で笑いながら言った。 エレナは、どっこいしょと重たそうな腰を上げた。 なぜか手には拳銃が握られている。
「あはは、あの月を撃ったら何か起きるかな?」
 エレナは虚ろな目で月を狙い、引き金を引いた。

 花火を点火したような、心地よく爽快な音が、草原にこだました。 すると、突然草原の草むらから人工的に起こしたような、自然界では絶対にありえないような量の煙が一帯を包んだ。 数秒後、煙の中からガラスを引掻くような悲鳴が聞こえ、さらに数秒、エレナが地面を這いながら死に物狂いで煙から出てきた。 まるで今にも死にそうな老人のように、苦しそうに咳をすると、ものの数秒後にうつ伏せになって悶絶した。 背中から腕、足までも痙攣し、口からは呻き声がとめどなく溢れていた。
 エレナが死にそうなのに対し、エトヴィーンは遠くでこの有様を見守っていた。 ああ、スモークグレネードなんてエレナに持たせるんじゃなかった。 また手間が増えてしまう。 エトヴィーンはエレナのもとへ駆け寄り、煙の粉塵が肺に入らないうちに、足を引きずって遠くへと逃げた。 逃げたといっても、さほど遠くではない。
   あとがき

 久しぶりに過去の作品を見た。 どうしようもないぐらいの駄作だ。 目を覆いたくなる前にとっとと推敲して書き直してみるとあら不思議、ずいぶんと軽くなったこと。



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